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非核の政府を求める会
  
シンポ「核兵器禁止条約交渉の決断か、核抑止への固執か
    ――日本政府の核政策を問う」 
ひらく
2012年12月22日

 核 非核の政府を求める会は2012年12月22日、東京都内でシンポジウム「核兵器禁止条約交渉の決断か、核抑止への固執か――日本政府の核政策を問う」を開きました。核兵器は非人道的であり非合法化すべきだとの世界の流れをふまえて、米国の「核の傘」に依存する日本政府の核政策転換の展望を探ろうと開いたもの。
 パネリストは黒澤満・大阪女学院大学教授、新原昭治・国際問題研究者、児玉三智子・日本原水爆被害者団体協議会事務局次長、土田弥生・原水爆禁止日本協議会事務局次長の4氏。藤田俊彦・前長崎総合科学大学教授、増田善信・気象学者の両氏が特別発言を行ないました。
 同シンポジウムでのパネリスト各氏の報告(要旨)を次に紹介します。(文責=編集部)


「核兵器なき世界」の流れの今と明日

黒澤 満(大阪女学院大学教授)

 世界の核兵器保有量は、2011年には2万500発と推定されます。米ロ2ヵ国が全体の約95%を保有しています。ピーク時の7万発から2万発への核軍縮ですが、米ロはその一方で核兵器の近代化を進めてきました。中国、イスラエル、インド、パキスタン、北朝鮮は拡大・近代化しています。広島型原爆の十数万発相当の爆発威力をもつ核兵器が2万発超いまなお存在し続けているのです。
 第66回国連総会は12月2日、47決議・5決定を採択しました。その半数が核兵器関連です。非同盟諸国のミャンマー決議、マレーシア決議は、ともに核兵器廃絶の実現を求めるもの。
 ミャンマー決議「核軍備縮小撤廃」は、一定の合意された時間枠のなかで、期限を切って核軍備撤廃を実行することなどを提起しています。昨年とほぼ同率の65%の賛成で採択。
 マレーシア決議は、国際司法裁判所の勧告――核軍備撤廃交渉を誠実に行ない完結させる義務がある――を確認し、その履行を促す内容です。法的拘束力のある国際約束を求めています。支持率は73%で、昨年を上回りました。
 日本は、この2つの決議に対し、「接近方法の相違」を理由に棄権しました。
 新アジェンダ連合決議は、「すべての締約国が条約の下での義務の徹底遵守について全面的に責任を負う」と強調して、核兵器国の約束不履行を批判。第1委員会で2年続けて日本決議案を上回る支持を得て注目されました。支持率93・3%で採択。
 日本決議は、唯一の被爆国でありながら、核兵器廃絶を早急に実現することの重要性に言及しませんでした。これまでと同様、「究極的核廃絶」論、ステップ・バイ・ステップで核軍縮過程を進める立場に止まっています。昨年とほぼ同率の93・3%で採択されました。この「究極的」核廃絶決議の共同提案国には米国主導同盟網の25ヵ国も加わりました。日本は、いわばその総代理人です。
 こうして、核軍備撤廃の大義をめぐる非同盟諸国提案の決議と同盟諸国提案の決議との対抗関係がかつてなく鮮明になっています。
 今総会には、軍縮機関の再活性化を迫る決議案「多国間軍縮交渉を前進させる」がオーストリア、メキシコ、ノルウェー3国によって提案されていました。ジュネーブ軍縮会議(CD)再活性化が不可能な場合、国連総会の決定により別途「作業グループ」をジュネーブに設置して、諸案件の交渉・協議に当たらせるとするものでしたが、提案3国は第1委員会最終日の前日に取り下げました。
 CDデッドロックの原因については、核兵器国の政治意思との関連こそ検討されるべきです。


国連に102万9031筆の署名を届けて

高草木 博(原水爆禁止日本協議会代表理事)

 私たちは、全国から集められた署名、地方自治体の首長・議長の署名の写真、各国政府への要請書を持って国連に出かけました。
 代表団は国連第1委員会の会場に入って声明書を配ったのですが、第1委員会でのビラまきは国連始まって以来初めてでしょう。
 要請文の一番のポイントは、世界185ヵ国がNPTにもとづいて自ら核兵器を全面禁止しているわけだから、核兵器の全面禁止は政治的意思があればできるし、それに着手することは直ちにできるはずということ。これに反論できる国はありませんでした。
 声明を会場で配ったら、婦人国際平和自由連盟(WILPF)が早速、世界中に発信してくれました。
 10月3日に第1委員会の会議が始まりました。私は、ドゥアルテ国連上級代表のスピーチを聞いているうちに体が火照ってきました。彼は、“アラブの春”は「世界全般にわたるものであり…それが今軍縮の分野にも押し寄せてきている」と語り、そこに「日本原水協の700万の署名がある」と言ったのです。核兵器全面禁止を50数年間訴えてきた人たちへの賛歌です。
 素晴らしいと思うのは、彼が、核兵器をなくすことは、国際政治の仕事と世界の人々の行動とが結びついてこそできると言ったことです。核兵器廃絶の目標で、国際政治と草の根が1つになったと感じました。
 第1委員会の審議の中身もすごいものでした。インドネシア大使は、核兵器廃絶というのは情勢がどうあろうと国際政治が直面する第一義的な必ず達成しなければならないことだから、自分たちは提起しているのだ、と。非同盟の国はどの国も、最初にこの非同盟の立場への支持を表明して発言します。
 もう1つは、ノルウェー、オーストリア、メキシコのすばらしいイニシアチブです。核兵器は直ちになくすべき第一義的な課題であり、潘基文事務総長の核兵器条約を含む「5項目提案」を実行に移すべきだという内容で、私たちとまったく同じです。
 私の話の最後は、日本政府の問題です。日本政府も今では「皆さんとアプローチは同じだ」と言いますが、「核保有国が乗ってくるものでなければ意味がない」と言って、アメリカが賛成するものでなければやらない。こういうのを世の中では従属国と言います。
 核保有国はいま、世界的に守勢です。来年は、NPT第1回準備委員会や中東非核地帯会議が開催されます。こういうチャンスは逃すべきではありません。
 被爆国日本から民主主義の波、人々の意思の波を作っていくことが本当に大事になっています。


「核兵器禁止条約」の速やかな実現を

大久保 賢一(日本反核法律家協会事務局長)

 私は、核兵器廃絶問題と原発に依存しない社会作りの関連性を考え行動したいと思っています。
 まず、核兵器のない世界を実現するために求められるものは何か、です。問題は日本政府の姿勢です。
 昨年のNPT再検討会議は、核兵器廃絶を政治的意思として全会一致で決定し、法的枠組みの重要性を確認しました。核兵器禁止条約の締結が最終的な法的枠組みになると思いますが、同時に、すでにある条約を最大限に活用することも法的枠組みに入ります。
 つまり、法的な枠組みというのは、非核法などの国内法があるし、北東アジア非核地帯条約なども考えられます。最終的には全面禁止を義務づける条約が必要になりますが、核兵器条約ができなければ使用や実験を禁止できないと考える必要はないと思います。
 日本政府は核兵器条約締結の交渉を始めようという提案に対し、棄権という態度をとっています。それは、日本政府が核兵器に依存しているからです。外務省の役人は、“アメリカの「核の傘」、日米同盟より優れた安全保障政策があるのか”と言います。彼らは、核兵器は国際法違反という立場ではないのです。
 日本政府は、それだけではなくて、わが国の安全を守るためには核兵器の使用はありうるとの立場です。核武装をしたいという人たちもいます。
 彼らがなぜそういう立場をとるか。日本政府には「核4政策」がありますが、一方で核は持ち込ませないとし、他方で核兵器に依存するという根本矛盾があります。核兵器は悪魔の兵器なのに、アメリカの核兵器を「守護神」だと言う。彼らはその矛盾を解決するために、非核3原則を2・5原則にしようとしています。
 他方、日本弁護士連合会などは、非核3原則を法的な力のあるものにしようと考えているし、日本被団協は、各地方議会に働きかけて非核法推進のキャンペーンを展開しています。
 では政府をどう変えていくのか。私は1つは、いまの政治家が小粒になっていると思います。官僚を変えていくためには大粒の政治家をつくり、官僚を動かすことのできる政府をつくらなければいけない。
 最後に、日本国憲法がどのような価値にもとづいてこの国をつくろうとしているのかの再確認が必要です。核兵器に依存しようとする人は軍事力に依存しようとし、憲法が邪魔になるから改憲しようとする。私は、憲法9条を守り生かそうとする人たちと核兵器廃絶の運動を一体化させながら世論を変えていくことが、ますます必要です。


変わるアジア、変われない日本外交・核政策

笠井 亮(日本共産党衆議院議員)

 3つの柱で報告します。
 第1は、11月にソウルで日韓・韓日議員連盟の総会が開かれ、私も議連メンバーとして訪韓しましたが、そこで私は、日本と韓国の政治を対比して、歴史と向き合い、両国とアジアの未来を語るかどうかに大きなコントラストがあることを痛感しました。
 この総会で李洛淵・韓日議員連盟幹事長は、「韓日両国で共通に適用されてきた反共主義のイデオロギーは色あせ、米国の指導力は相対化し…韓日両国が世界に共に貢献できる余地も大きくなり…議員連盟もそのような役割を果たすべき重要な架け橋の1つ」と言いました。ところが、日本側の自民党議員の演説は語るべきものなしでした。
 私は明日、韓国政府主催の「朝鮮王室儀軌」返還行事に招待されていますが、招待状には「あなた方の熱心な関心と努力なくして実現しなかった」とあります。
 韓国の視点と比べても、、歴史に背を向け続ける日本外交に非核平和の未来は語れないと痛感しています。
 東南アジアについても、東南アジア友好協力条約(TAC)はヨーロッパを含む19ヵ国とEUも加盟する規模となっています。東南アジア非核地帯条約、ARF、南シナ海行動宣言もあります。まさにこの地域は、世界平和に向けての源泉としての役割を発揮してきているのです。
 ASEANのバリ首脳会議は、東南アジア非核地帯条約について、核保有国とASEANが早期に条約の署名・発効を可能とするための措置を取ることで合意しました。東南アジアを非核地帯かつ大量破壊兵器のない地帯として保護することは、ASEANの目的の1つです。
 国連総会でミャンマーやマレーシアが提案した核兵器廃絶決議も、こうした流れの中で主張され、支持を広げていると言えます。
 日本では政権交代から2年余。アジアの流れに逆らいながらアジアに入り込こもうとするアメリカの戦略に付き従って、アジアと世界の本流に背を向けているのが野田政権です。核兵器問題では「核抑止力は引き続き必要」と公言し、国連総会の日本決議でも、2010年から「究極的廃絶…」の表現を復活させています。核密約問題でも後退しています。
 まさに、憲法9条を持つ、被爆国が、戦略なく、アメリカにものを言えず付き従っていく外交でいいのか、根本が問われています。
 東南アジアで広がる戦略的な非核平和の流れを、北東アジアに広げていくために、被爆国日本の役割を果たす政治への転換がますます大事です。


中東革命の現状と非核地域化構想の展望

栗田 禎子(千葉大学教授)

 私は革命直後の4月、エジプトに行き、6月にはベルリンで開かれたパグウォッシュ会議中東パネルに参加して、中東の科学者や外交官と話してきました。
 まず、中東の革命状況をどう捉えるかです。1月にチュニジアで、2月にエジプトで相次ぎ政権が崩壊しました。エジプトもチュニジアも植民地支配から革命で独立した当時は革新的政権でしたが、第3次中東戦争でアラブがイスラエルに惨敗したことがきっかけになって、アメリカに従属的な政策に転換し、貧富の差が拡大し失業者が多くなり、腐敗を隠蔽するために、政権交代させず世襲化・王朝化していきます。
 エジプト人は、50〜60年代のエジプトは道義的に光り輝いていたが、国際政治での発言力は低下してしまった、革命を経て復活させるのだと言っています。
 結論的に言うと、両国の政権崩壊をもったいなかったと心配する必要は全然なく、むしろこの革命の結果、これまで形骸化していた非同盟運動や核兵器廃絶の動きも、国民の運動に支えられて真に活性化するだろうと思います。
 第2点目に強調したいことは、パレスチナ問題にも、中東革命が新しい追い風になるということです。パレスチナの人たちは、独裁政権が民衆の非暴力の闘いによって倒されたことを喜んでいました。独裁政治は、“イスラエルは民主国家でアラブよりまし”として、パレスチナ問題解決の大きな阻害要因になっていたからです。民主的な政権が生まれて、パレスチナ問題の大義を訴えれば、世界が耳を傾けるだろうとの期待が生まれています。
 実際、今年は非常にパレスチナ人の闘いは活性化しています。今年9月、パレスチナ自治政府が国連加盟申請のキャンペーンを行なったのもその一環です。
 第3点目は、中東情勢の撹乱要因としての「イラン核開発疑惑」問題です。
 今、中東で孤立するイスラエルやアメリカが唯一希望をつないでいるのが、イランの核開発疑惑です。
 第4点目。3・11福島原発事故を知ってしまった我々は、中東で核の平和利用=原発推進についても、核の平和利用と軍事利用とは紙一重だ、今の技術では核と人間は共存し得ないことを言っていく必要があると思います。
 中東には今、富を増やすだけでなく、人間性や社会的平等を重んじる方向に舵を切り替えるべきだという意識が非常に高まっています。このタイミングを捉えて、「平和利用」も駄目だという議論をしていくべきだと思います。


揺れる米国の政治状況と核政策の行方

三浦 一夫(国際ジャーナリスト)

 オバマ政権は「チェンジ(変革、変化)」を掲げて票を集めて登場しました。イラクやアフガニスタンからの撤退、多国間協調主義、国連重視、アラブとの対話等々、新しいボールを投げてきたのは事実だと思います。経済政策でも、新自由主義の一定の是正等を言い始めたのですが、結局うまくいっていません。
 変化の中でいちばん大きなものが、「核兵器のない地球」の宣言でしょう。
 その後のアメリカの現実を見ると、第1に、帝国主義的な政策の基本は変わっていません。第2に、アメリカの軍事戦略ではイラク、アフガンから撤退しつつあるけれども、軍隊を残す。アフガニスタンだけではなく、パキスタンを含めてかなり対立状況を深めています。
 アメリカの軍事戦略について、昨年発表された「QDR」を見ると、多国間主義などの変化があることは事実です。同時に「ブッシュ・ドクトリン」の先制攻撃政策を乗り越えて、「世界的規模の公共財」が脅かされる場合は断固として対処するとしています。
 第3に、核兵器の問題です。「核兵器のない地球」を宣言したプラハ演説でオバマは、同時に、自分の生きている間はむずかしいと言い、「他の国が核を持っている限りは、自分は持ち続ける」と宣言しています。
 核兵器の廃絶の問題では、昨年初めに発表された「NPR(核態勢見直し)」報告が重要です。肯定的なのは、「核兵器への依存を下げる」と言い、「核兵器のない地球」も入っています。同時に、「抑止力」政策を掲げています。
 オバマ政権の核兵器政策の最大の重点は、今持っている核兵器を保全し、いつでも使えるように管理体制を強化することです。かなり予算をつけ、未臨界核実験も2度やりました。「拡大抑止」政策も重視する必要があります。
 第4に、そういう中でのアジア戦略です。アメリカは太平洋国家だから、アジアでもアメリカ抜きで事を進めてもらっては困ると、オバマ政権ははっきり打ち出してきました。経済危機を挽回し、再建するうえでアメリカはアジアを重視しているということです。
 アメリカの矛盾の深まりを見るうえで重要なのが「ウォールストリートを占拠しよう」運動です。国際的に“アラブの春”の影響を受けて広がっていること、今の選挙制度ではだめだと言っていること、要求の中に大量破壊兵器問題もあることなどが注目されます。いろんな要求が出てきているところに、この運動の示唆するものの大きさを見る思いがします。

  (パネリストの報告全文・関連資料は近日発行の『報告集』に収録します)