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「今日の『核抑止』と日本の進路」ひらく
07年12月8日

 非核の政府を求める会は2007年12月8日、東京都内でシンポジウム「今日の『核抑止』と日本の進路」を開きました。同シンポジウムでのパネリスト5氏の報告(要旨)を次に紹介します(文責・編集部、報告全文・資料を収録した『記録集』は近く発行されます)。
米「拡大抑止」の戦略的意味と日本の立場
新原 昭治
(国際問題研究者)
 「核抑止」は安全を保障するかのように宣伝されていますが、実際は、米核兵器使用作戦を含む戦争に日本国民を道連れにする危険を秘めています。この問題の本質を明らかにすることは今年、米軍再編、日米同盟再編問題が新展開を見せただけに大事です。

 今年5月1日、ワシントンで開かれた日米安保協議委員会(2プラス2)は、米核攻撃戦力が日米同盟の最重要戦略だと共同発表しました。“米国の「拡大抑止」は日本の防衛、地域の安全保障を支える”とし、「拡大抑止」の中核として“あらゆる種類の米国の軍事力(核および非核の双方の打撃力および防衛能力)”を挙げています。日米両政府の合意文書で米核攻撃戦力をこれほどはっきり述べたのは初めてです。

 米ブッシュ政権の核戦略は、米ソ対決時代以上にいっそう野蛮なものになっていますが、この実像があまり知られていません。

 ブッシュ政権の核戦略の新しい特徴について、カナダのデイビド・マクドナ、アメリカのハンス・クリステンセンは、5年前の「核態勢見直し」が打ち出した「新3本柱」が具体化される段階に入っていると指摘しています。3本柱とは、(1)核戦力と通常戦力を統合し垣根をなくす(2)ミサイル防衛など敵の攻撃力を無にするための取り組みと一体化(3)核兵器開発生産のための軍事支援基盤の強化です。特に核戦力と通常戦力の統合が目立っています。

 
攻撃目標としては、クリステンセンが今回入手した「核戦争計画」では「地域的な強国」への核攻撃計画が特徴です。

 ブッシュ政権の戦略構想は、敵の抑止能力の全面破壊です。この核攻撃作戦を完璧に近づけるために推進しているのが「ミサイル防衛」です。すべては米国1極支配の実現という目標に結びついています。

 この問題は、いま進められている米軍再編、日米同盟再編と深く絡み合っています。私はこれまで、在日米軍再編の問題点について、米軍の出撃基地としての強化、海外派兵自由化の推進、秘密外交の推進・国民の知る権利の抑圧を挙げてきましたが、これに米核戦略絡みの米軍再編の意味を加える必要があると考えます。

 今年6〜7月、青森県三沢の航空自衛隊F2戦闘機がグアムで米軍戦闘機と共同演習をやり、初めて500ポンドの爆弾の実弾投下訓練をしました。この共同演習の相手方が、キャノン基地からやってきた核攻撃任務を持たされたF16戦闘機部隊であったということは、重視すべきです。

 こうしたことは、非核の日本を求める多くの国民の願い、核兵器廃絶への国民的要求に逆行するものと言わねばなりません。

 ノーベル賞を受賞した故ロートブラット博士は、「拡大抑止」について、“拡大抑止力は核兵器の先制使用を意味する。…もし核兵器が、通常戦力による攻撃を抑止するのにさえ必要だと容認してしまったら、紛争が落着するまで核兵器は存在し続けなければならないことになる。もし核兵器がアメリカにとって、そのような目的に必要であるなら弱小国はいっそう必要となる。かくて、核兵器拡散が引き起こされ、核兵器はやがて戦闘において使用されることになろう”と鋭く批判しています。

  「核抑止」が、こういう危険な核兵器使用戦略を覆い隠す用語になっていることを、いかに明らかにし、どう世論に訴えていくかが、今日の重要なポイントではないかと思います。

「核抑止」論の現状とその破綻
中嶋 篤之助
(元中央大学教授〈核化学〉)
 『広辞苑』を引くと、「抑止」というのは、「抑えとどめること」、「核抑止」は「核兵器によって相手国を恐れおののかせ核攻撃を思いとどまらせようとすること」とあります。核兵器によって相手国を恐れおののかせるために、核兵器がどういうものかを知らしめるために実際に使われたのが、広島と長崎への投下です。

 原爆を投下した米国側の事情は、アメリカのジョセフ・ガーソンさんの著書『帝国と核兵器』に詳しく書いてあります。要するに、戦時中の同盟国であったソ連の発言権を抑え、アジアにおける拡張阻止であったというわけです。これはまさに最初の「核抑止」です。

 ガーソンさんは雄大な歴史的分析にもとづいて、米西戦争以来の太平洋における米国と日本の利益の衝突が背景にあると述べていますが、それに核兵器が利用されたのです。

 第二次世界大戦終結直後の1950年に朝鮮戦争が始まります。我々が忘れてならないのは、朝鮮戦争はまだ終わっていないということです。53年に停戦協定ができて、それがいまだに続いている。これは平和回復などではありません。

 マッカーサーの反撃に対して、中国が人民義勇軍を出して参戦し、国連軍は打撃を受けて後退します。この時、マッカーサーは中国東北部に原爆を投下したいと要請し、トルーマン大統領は了承したのですが、英国のアトリー首相が異議を唱えて中止されました。

 ソ連は49年に最初の原爆実験をします。これは、アメリ軍部の予想よりはるかに早かった。しかしソ連は当時、原爆はつくったけれど運搬手段を持たなかったので、対抗策はB29を落とす防空でした。ですから、原爆はソ連の神経を脅かす“神経戦”というのが、スターリンの考えでした。

 中国の毛沢東も「原爆は張子の虎」という考えです。「張子の虎」では誰も驚かないということになりますが、中国人民は何も知らされなかったと言えます。

 非核の政府を求める会ができてすぐ、なぜ「核抑止」問題のシンポジウムを開いたかと言えば、パグウォッシュ会議の関係です。パグウォッシュ会議は55年の「ラッセル・アインシュタイン宣言」を受けて、57年に第1回会議が開かれ、核兵器をなくさなければいけないと話し合われたのですが、第2回会議で「原子爆弾と共に生きよう」という主張が出され、「核抑止の協議が核軍縮への大通り」ということになってしまった。

 しかし、79年に京都で開かれたパグウォッシュ・シンポジウムで「湯川・朝永宣言」が確認されました。この宣言は、「真の核軍縮の達成をめざすなら、私たちは何よりも核抑止という考え方を捨て、私たちの発想を根本的に転換する必要がある。…今日の時点でもっとも緊急を要する課題は、あらゆる核兵器体系を確実に廃絶すること」だと訴えたのです。

 いまわが国で、「日本も核武装を」といった無責任な議論があります。驚くべきことに、それが国会議員に非常に多いわけです。このことをみると、「核抑止」論というのは、どうも核兵器廃絶が達成されるまで生き続けるのではないか。

 最後に一つ付言します。故・渡辺洋三先生は、87年の「核抑止論」シンポジウムのあと、我々が今後やらなければいけないこととして、核軍拡経済問題の解明を強調しておられます。世界の軍事費が1億2000万ドルにも達したいま、渡辺先生の遺言ではありませんが、その研究が必要な時かもしれません。

ミサイル防衛(MD)の危険──最前線から見えるもの
斉藤 光政
(「東奥日報」編集委員・三沢支局長)
 ミサイル防衛(MD)は、あまり進んでいない在日米軍再編の中で、唯一突き進んでいます。この意味するものは、「日米の一体化」、日米の融合です。アメリカが「核抑止」の名で日本を戦争の道連れにしようとする、その実際の現れがMDだと言えます。

 MDとは、元々はレーガン政権の「SDI」(スター・ウォーズ計画)で、それが今度MDとして復活してきました。大まかに言うと、(1)弾道ミサイルの発射直後(2)大気圏外の中間段階(3)落下直前の段階の3段階で、北朝鮮、中国、ロシアが発射したミサイルを撃ち落とそうというものです。

 日本はどう関わるかと言うと、第2段階と第3段階で独自の迎撃システムを作ろうとしています。結局、米国のMDの大きな傘の中で自分の小さな傘を作ろうとしているのです。

 MDで大事なのは、相手の弾道ミサイルを迎撃するために、その着弾地点、着弾時刻、弾頭が本物か偽物かなどを速く、正確に知ることです。そのために生まれてきたのが最新兵器「Xバンドレーダー」です。「Xバンドレーダー」は高周波で減衰率が高いため、探知距離は千〜千数百キロと推定されています。

 この「Xバンドレーダー」が青森県・車力に配備されることになったのは、元々、PAC2を置いている航空自衛隊基地があるからです。そこには現在、100人配備されていますが、軍人は2人しかいません。残りの98人のほとんどはアメリカのレイセオン社という、ミサイルやレーダーなどをつくる軍需企業の技術者です。初めて実戦配備した「Xバンドレーダー」のデータがほしいからです。

 さらに今年10月、「JTAGS」(統合戦術地上ステーション)が、やはり青森県の三沢基地の中につくられました。これはコンピュータの塊で、MDの中で「Xバンドレーダー」が最前線の目だとすると、これは米静止衛星からの情報を受け付け処理する頭脳です。このようにMDの目と頭脳が本州最北端に集中配備されてしまったわけです。

 自衛隊はこれと別のレーダー「FPS−XX」(将来警戒管制レーダー)を千葉県に配備し、続いて新潟県佐渡、青森県むつ市に配備しようとしています。このレーダは低周波で減衰率が低いため遠くの情報までとらえられます。防衛省は日米のレーダーの補完体制と言っています。

 アメリカはヨーロッパでもMDを配備しようとしており、ロシアはこれへの対抗措置として先月、ベラルーシに中距離ミサイルを設置すると表明しました。

 日本はMD計画のために1兆円も使うと言われていますが、性能はどうかと言えば、米国のシンクタンクの人は、命中率は20%以下と言いました。しかもMDにはいろんな政治的な問題が含まれています。日本のミサイルが米国に向かうミサイルを撃ち落とせば集団的自衛権の行使となるし、イージス艦の最新型スタンダードミサイルの日米共同開発は武器輸出3原則に引っかかります。国民には何も知らされず知る権利まで侵されます。

 こうした動きに対し、北朝鮮軍の高級将校は、兵士がお腹に高性能爆薬を抱えて落下傘降下し、在日米軍基地の「Xバンドレーダー」やパトリオット基地を破壊すると言っていました。MDは「抑止」だと言いますが、実際は、その配備が相手を刺激し、逆に相手の攻撃の呼び水になっているのです。MDが「終末時計」を何秒かでも早める役割を果たしているのではないかと思います。

「抑止」は果たして防衛的か
第62回国連総会における米代表団の言動を考える

藤田 俊彦
(前長崎総合科学大学教授)
 抑止の英語デタランスの元のデターという動詞の意味は、「脅しをかけて何々をやめさせる」ことです。アメリカは、広島・長崎の原爆投下で実証した威力を脅しの手段として利用し、他国に米国の意に沿わない政策や行動をとらせない方針を追求してきました。これが「核抑止」です。

 最初に、現在の世界の核兵器状況をみると、総数は会が発足した1986年の7万基から2万7000基へと減少しています。全体の爆発力は広島型原爆の40万発超分と推定されます。いずれにしろ全貌について透明性が欠如し、説明責任が果たされていません。
 さて、第62国連総会本会議で採択された核兵器関連決議について報告します。 第1グループは、核兵器の廃絶を求める決議です。新アジェンダ連合を代表してメキシコが「核兵器のない世界に向けて」決議を、非同盟運動のミャンマーは「核軍備縮小撤廃」決議を提案しました。日本提案の決議は「核兵器の全面的廃絶に向けた新たな決意」と題されています。マレーシアからは「核兵器条約締結」決議が提案されています。これらの諸決議が圧倒的多数の賛成を得て採択されました。イラン提案の核兵器廃絶の「明確な約束」の実行を求める決議が60%を上回る賛成を集めたことは注目されます。
 第2グループは、ニュージーランド提案の「核戦力作戦準備態勢の低減」など核兵器関連の個別課題に関する諸決議、第3グループは非核兵器地帯に関する条約等の決議、第4グループは、核軍備撤廃国際会議の提起などです。

 アメリカ政府代表はこのような核兵器関連決議・決定のうち投票にかけられた20件すべてに反対しました。最近10年間をみても前例のない珍記録です。核兵器の勝手な使用の意思を国連総会の場で表明したわけです。包括的核実験禁止条約、宇宙空間軍事化防止決議にも、核兵器の垂直拡散の思惑から反対しました。

 アメリカはどのような論議で反対したのか。ロッカ大使は、「世界の国々が核兵器の全面廃棄に必要な環境を創造できる時まで、核軍備は妥当性を持ち続ける」と断定しました。アメリカが必要な環境ができたと認めるまで、核廃棄を無限に先延ばしするということです。米国務省のエバーハート氏は第1委員会で、アメリカの力点は核兵器不拡散の遵守だと強調しています。

 次に、日本決議をどう見るか。1日も早い全面的な核兵器廃棄要求を本文冒頭に掲げるべきでした。95年・00年NPT再検討会議の成果についても、「想起する」に止めています。結局、アメリカの言動をバックアップすることになります。また、核軍備縮小撤廃のための国際連合会議開催についても、これに反対する米、英、仏の意向を尊宅して言及しませんでした。ローマ教皇庁代表が2009年世界サミットの開催を訴えたのに、です。日本決議は古い「究極的廃絶論」の改訂版にすぎません。

 この文脈で、オーストラリアの労働党新政権の発足が注目されます。11年前、キャンベラ委員会を設立し、その報告書の生みの親となった労働党政権がいま、どのような核兵器政策をとるのかが注目されます。

 日本は、アメリカの「拡大抑止」に加担して、「核の傘」の恩恵にあずかり続けるようでは、「核兵器廃絶の決意」表明も説得力を持ちえません。内外に「非核日本宣言」を発し、「非核3原則」を厳守してこそ、日本発の核兵器廃絶決議を本物にすることができます。

新テロ特措法と日本外交の前途
笠井 亮
(日本共産党衆議院議員・国際局次長)
 きょうは太平洋戦争開始66年になります。今、国会にいて、3つのことを強く感じています。1つは、先の参院選で、戦争する国づくりをめざす勢力が国民の審判を受けて大打撃を受けた中での12月8日だということです。「今は反動の時代」と反動勢力が言う面白い情勢です。

 2つ目に、国民の声と運動が政治を動かし、史上初めて海外から自衛隊を撤収させたことです。政府は、自衛隊を15年間海外に出してきた努力が水泡に帰す危機感を感じています。

 3つ目には、新テロ特措法、恒久法改憲などの巻き返し、せめぎあいの中で今日を迎えていることです。2大政党の片方だけでは、消費税増税や改憲はやりにくいということで「大連立」の動きも出てきました。

 戦争と被爆の真実を伝え、9条を守り抜くことはますます大事です。

 大きな2つ目は、新テロ特措法に関わる問題です。

 
国会審議を通して法案の問題点が浮き彫りになりました。報復戦争支援法ということでは、日本政府も米軍が複数の任務を持っていることを認めざるをえなくなりました。テロ根絶逆行法という点でも、この6年間でテロは根絶するどころか拡散し、ますます治安が悪化しています。

 給油問題も、原油が高騰し食料品、原材料にも波及する深刻な状況があるわけですから、“戦争支援の給油でなく、庶民にこそ給油を”という点も大いに突いていく必要があります。

 福田首相は、和平プロセスが大事だと認めつつ、掃討作戦と車の両輪でと言うわけで、そういう答弁に固執する向こうに、対米追随の呪縛を強く感じます。

 今、世界的な潮目の変化を感じます。「テロとの戦い」で、圧倒的な国は軍事行動に参加せず、国連安保理決議にもとづく法の裁きを中心とした活動に参加しています。オーストラリア、ポーランドもイラクから撤退する方向だし、中南米でもアメリカにはっきり物を言う流れが強まっています。

 大きな3つ目は、防衛省利権疑惑の追及の中で、戦争する国づくりと一体の日米軍事利権疑惑の構図が浮き彫りになっていることです。ミサイル防衛(MD)は98年の日米「2プラス2」で当時の額賀防衛庁長官と高村外務大臣が出席して始まったものです。防衛省は06年度から警戒管制レーダーの配備を開始しましたが、すべて三菱電機の独占受注です。その契約で決定的な役割を果たした額賀氏は三菱グループから接待を受けたことを認めています。

 これほどまでに日米軍事利権が巨大化した背景に、小泉内閣以来、海外派兵を自衛隊の本来任務にし、米軍再編などの軍拡政策を推進してきたことがあります。今後、武器装備の必要性を含めて軍事政策そのものの見直しが一番のポイントになります。国民にすれば、“油出すより膿みを出し切れ”というのが今の共通の思いだろうと思います。

 
その意味では今、アメリカ言いなり政治の問題点が見えやすくなっており、そこから脱却する重要性について国民的な議論が大事だと思います。日本が非核平和の自主外交に転換し、核兵器廃絶の先頭に立つこと、そのためにも、「非核日本宣言」運動や非核政府の会の役割が、いよいよ大事になっていると思います。