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 ●シンポジウム
 
「核兵器廃絶への展望がもてた」
非核の政府を求める会がシンポジウム
2007年1月27日 
 「とても刺激的なシンポだった」「理論的な解明がなされ展望がもてた」─。非核の政府を求める会は1月27日、東京都内でシンポジウム「核兵器廃絶の展望を探る」を開き、8人のパネリストが多角的に報告。参加者からも活発な質問・意見が出されて議論が深まり、核兵器廃絶条約実現への今日的な課題、この流れを促進する可能性を探る集いとなりました。
 基調報告は、黒澤満・大阪大学大学院教授(国際法)、藤田俊彦・前長崎総合科学大学教授(国際政治)、笠井亮・日本共産党衆議院議員・国際局次長の三氏。

 「核兵器廃絶条約をめぐる現状と実現の課題」のテーマで報告した黒澤氏は冒頭、ブッシュ政権になって核軍縮状況が悪化する中、こういう形で2年先(の任期切れ)を見据えながら議論するのは非常に有効だと発言。核兵器廃絶条約案は検証制度等も備えたモデルが国連文書になっており、問題は廃絶への政治的意思があるかどうかだと指摘。核兵器廃絶条約への進展を阻害している要因として国際安全保障環境の悪化、米国の核開発・使用政策など5点にわたって分析するとともに、今後とるべき政府レベルの措置として、2000年NPT会議の「明確な約束」の再確認を核保有国に迫る、米国の「核の傘」の下にある中間国と新アジェンダ諸国との連携等を挙げました。

 藤田氏の主題は、CTBT(包括的核実験禁止条約)とカットオフ条約(兵器用核分裂性物質生産禁止条約)に命を吹き込み、それによって核兵器廃絶の実現の過程をいかに加速させるか。▽両条約の成立・遵守は核軍備の縮小撤廃、不拡散に役立つ▽消極的安全保障確約、非核地帯設置等の他の個別的諸協定と相まって制定することが望まれる▽こうした過程が核兵器の全面的禁止・廃棄を定める核兵器条約の締結を導くことが期待される▽核兵器国とりわけ米国の政治意思を核兵器廃絶の方向に切り替えさせる、などが重要だと強調しました。

 笠井氏は「非核の国際的流れと被爆国日本の役割」について報告。キッシンジャーら米国の元政府高官4氏による「核兵器のない世界」の訴えや、ベトナム訪問、非同盟諸国首脳会議参加など自身の国際活動をふまえて、非核・平和の大きな流れのなかで2007年を迎えていると発言。この中で核兵器廃絶を口にしながら米国の「核の傘」にすがりついている日本政府の異常さを指摘し、米核戦略に組み込まれている日本の現実がアジアの緊張を作り出していると批判。政府が「国際社会において模範となる国にしたい」と言うのであれば、被爆国として核兵器全面禁止・廃絶の国際協定締結のイニシアチブをとるべきと述べました。

■テーマ別に可能性を探究

 テーマ別報告は、新原昭治・国際問題研究者、吉田康彦・大阪経済法科大学客員教授・元IAEA広報部長、栗田禎子・千葉大学教授(イスラム地域史)、田中則夫・龍谷大学教授(国際法)、土田弥生・原水爆禁止日本協議会事務局次長の各氏が行いました。

 新原氏は、米国の核兵器造りについて、エネルギー省が昨年10月、「信頼できる代用核弾頭計画」(RRW)の一部として「コンプレックス2030」計画を発表するなど現存核兵器を大幅に新型核兵器に取り替える動きが発展していると指摘しました。核兵器使用戦略については、2005年末から「グローバルストライク態勢」をとり、核戦力を中核に位置づけつつ、「核戦力プラス通常戦力」の統合戦力構成が特徴だと分析。米核政策の「二重基準」は、「俺の言うとおりやれ、俺のしているとおりにやるな」ということだと批判しました。

 吉田氏は、核エネルギーの多国間管理について、ブッシュ政権の「グローバル・核エネルギー・パートナーシップ構想」(GNEP)と、濃縮ウラン輸出6ヵ国提案、日本提案の2つの核燃料供給保証構想の3案について詳しく解説。大きな流れとして、核拡散の阻止が重要な半面、原子力の平和利用が進み、今後20年ぐらいの間に世界で100基以上の原子炉の建設が始まる見通しと述べ、日本としても不拡散体制にもっと関心をもつべきと訴えました。

 「『大量破壊兵器のない中東』実現の道」を主題に報告した栗田氏は、大量破壊兵器のない中東をめざす歴史的経過にふれて、眼目は非核兵器地帯化でありイスラエルの核だと指摘。この構想が米国等による中東介入の口実として国際政治のカードに利用された面を見落とせないが、構想自体のポジティブな性格、方向性は間違っていないと指摘。今後の留意点として、▽国際社会によるイスラエルへの働きかけ、その前提となるパレスチナ問題の解決▽中東だけではなく世界にこの構想を広げることが重要だと語りました。

 田中氏は「非核兵器地帯条約の進展と今後の課題」について報告しました。昨年、中央アジア非核兵器地帯条約が成立し、現在世界110ヵ国以上が5つの非核兵器地帯に含まれると述べ、各条約の特徴を解説。核兵器の廃絶を展望するうえで、非核兵器地帯の考えは軍縮や軍備管理とな異なる第3のルートから展望する動きであり、非核三原則の国際版という性格を持つと語り、核兵器国に議定書の批准を迫ることが大きな課題と強調しました。

 土田氏は、核兵器廃絶にむけて今年、何を焦点に活動するかを中心に報告。草の根の力こそ核兵器廃絶への道を切り開く力と述べ、国際活動の柱として▽2010年NPT会議準備委員会と国連の場での各国政府への働きかけ▽アジアの反核・平和運動との連帯・交流の強化を強調。新アジェンダ連合や非同盟諸国の政府高官から「日本政府をなんとかして」との声があることにもふれて、米国の「核の傘」に固執する日本政府の姿勢を広く国民に問うていきたいと話しました。                
 同シンポジウムの報告全文・資料は同名「記録集」に収録しています。