| シリーズ「広島・長崎被爆の実相」 |
| 第27回 中性子爆弾など |
| 中嶋篤之助 |
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前回、「核融合爆弾とは」というテーマで、いわゆる水爆なるものについて解説しました。そこで述べたように純粋な核融合&コ器は存在せず、必ず核分裂爆弾の発する超高温、あるいは超高圧などのエネルギーを利用して融合反応を起こさせるものでした。このことから、核分裂爆弾と核融合爆弾の中間に位置する核兵器群が存在することになります。以下に解説する中性子爆弾などが、それにあたります。
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| ■放射線強化兵器(中性子爆弾) |
威力は約1キロトンと非常に小さいものの、爆風と熱の効果を最小にして、中性子の効果を最大にするように設計された水素爆弾の一種であるため、中性子爆弾と呼ばれています。
前回の核融合反応のうち、主要なD─T反応では、中性子が全質量の5分の1を占めています。核融合反応のような条件では、運動エネルギーは核種の質量に反比例して配分されます。したがって、中性子は全エネルギーの5分の4を受け持つことになります。爆弾に中性子を吸収するような物質がなければ、放出されたエネルギーの80%が中性子に与えられ、熱や爆風の効果に使われるのは20%だけです。
中性子爆弾の主要な目的は、副次的な被害をあまり及ぼさずに、戦車の乗員を殺すことです。生じる放射能が非常に少ないので、中性子爆弾は「きれいな」兵器ということになるかもしれませんが、単位爆発威力当たりの致死的な放射線効果は、非常に「汚い」兵器の場合よりもさらに大きくなります。
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| ■ブースター爆弾 |
核分裂爆弾のプルトニウム球を中空にして、その中心に少量の核融合物質を置いた場合、爆縮による圧縮と加熱により小規模の熱核反応が起こりえます。この反応で放出される大量の中性子がプルトニウムに衝突し、もとの連鎖反応以上の核分裂を起こします。すなわち、核分裂収量の合計は著しく増大するのです。この方法を「ブースト(後押し)」と呼んでいます。
1953年8月12日に旧ソ連のセミパラチンスクで実験された「レーヤーケーキ爆弾」は、サハロフの設計になるもので、威力400キロトンでした。この実験は水爆開発に熱中していた米国に衝撃を与えました。それは水爆開発でソ連に先行されたという認識(誤った認識)となり、同年12月8日の国連総会におけるアイゼンハワー米大統領演説の契機となったのです。
しかし、この爆弾は、熱核爆弾の一種ではあるにしても、テラー・ウルム方式の2段階水爆ではなく、むしろ、「ブースター爆弾」というべきものでした。
ソ連における2段階水爆は、1955年11月22日にセミパラチンスク実験場で行われた威力1・6メガトン(最初の設計では3メガトンであったが、環境への影響の心配から半減された)の熱核爆弾でした。
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| ■コバルト爆弾 |
1992年9月、日本ユーラシア協会が派遣した、ソ連の核実験場の調査団は、セミパラチンスク実験場内部の核実験の結果できた「原子の湖」と呼ばれる巨大なクレーターの周囲から採取した土壌を持ち帰りました。
ところが後に、野口邦和氏(非核政府の会核問題調査専門委員)によりその土壌が分析されると、おそらく実験から数十年後と推定されるにもかかわらず、顕著なコバルト60が含まれていることが判明しました。これは、ソ連が秘密裏にコバルト爆弾の実験を行ったことによるものとみられ、文献以外でおそらく初めて発見されたソールティング爆弾の例であると考えられます。ソールティングとは、塩漬けにして長持ちさせるという意味から発して、「ごまかして実際以上の価値を付け加える」という意味です。
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| (なかじま・とくのすけ=常任世話人・核化学者) |
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